1.関節リウマチに用いられる補完代替療法
![(日本語)リウマチの治療法 - あぽてけ診療所](https://wellness-science.tokyo/wp-content/uploads/2023/10/(日本語)リウマチの治療法-1024x512.jpg)
現在数多くの補完代替療法が関節リウマチに利用されています。
関節リウマチに多く用いられている補完代替療法に関して、2010年に行われた調査では、リハビリテーションやマッサージが多く用いられており、施術を受けた患者さんの満足度も高いことが示されています。
次いで瞑想、鍼治療、ヨガなどが用いられています。
ヨガや瞑想、リハビリテーション、理学療法などの方法は、臨床試験(ランダム化比較試験)においても関節リウマチ患者さんの疼痛(しつこい痛み)や気分の改善に有用であることが示されています。
一方で健康食品や鍼については、有効性と安全性に関する科学エビデンスがあるものは現状限られています。
(各補完代替療法の詳細はこちらをご覧ください)
リウマチ治療に限ったことではありませんが、補完代替療法の利用を考える際には、“信頼できる情報”を探すことが極めて重要になります。
インターネット上には多くの情報が存在しますが、どの情報が信頼できるか見極めるのは一般の方では容易でないため、医師や薬剤師、消費者庁が推奨するアドバイザリースタッフ(健康食品管理士・食品保健指導士・NRサプリメントアドバイザー)に相談してください。
いくつかの補完代替療法はリウマチの補完代替療法として有益である可能性が示されていますが、一方で他の療法はむしろ害を及ぼす可能性すらあります。特に病院で抗リウマチ薬を処方されている方は、組み合わせることができる補完代替療法に限りがあります。自己判断で間違った組み合わせを選択してしまうと病気が悪化したり、薬の効果を弱めてしまったり、副作用が強く出てしまうことが少なからずあります。
それでは、リウマチの治療に利用されている補完代替療法について記載いたします。
![指圧 - あぽてけ診療所](https://wellness-science.tokyo/wp-content/uploads/2023/08/指圧-1024x683.jpg)
(1)健康機能食品・サプリ
健康食品ではライコウトウ、魚油、ビタミンE、ボラージや牛軟骨のエビデンスレベルがほかの食品と比べて高いようでした。
![ハーブ - あぽてけ診療所](https://wellness-science.tokyo/wp-content/uploads/2023/04/ハーブ.webp)
世界最大の健康食品に関するデータベースである「ナチュラルメディシンズ」に基づき各成分の有効性に関するエビデンスレベルを記載しました:
レベル1:有効
レベル2:おそらく有効
レベル3:確実ではないが有効性が科学的に示唆されている
レベル4:有効でない可能性がある
レベル5:おそらく有効でない
レベル6:有効でない
①ライコウトウ:(有効性エビデンス:レベル3「確実ではないが有効性が科学的に示唆されている」
![SONY DSC - あぽてけ診療所](https://wellness-science.tokyo/wp-content/uploads/2023/09/ライコウトウ-1.jpg)
ライコウトウ(サンダーゴッドバイン、タイワンクロヅル)は、中国南東部でよく栽培されている多年草です。伝統的な漢方薬として何百年も前から使われていたと言われています。
関節リウマチ・多発性硬化症・クローン病・全身性エリテマトーデス・乾癬・発熱などに対する健康食品として宣伝・販売されています。
予備的な研究では、ライコウトウを経口摂取または外用することで、関節リウマチの症状に有益である可能性が示唆されました。
いくつかの研究では、関節の腫れや圧痛などの症状に対して、標準的な内科的治療とライコウトウを併用することで、標準治療のみの場合よりも有用である可能性が示唆されています。
また他の研究では、関節の腫れや圧迫感を軽減するために、ライコウトウを単独で使用した場合、従来の内科的治療と同等に有用である可能性が示唆されています。
ライコウトウは消化器系、心拍数の異常、高血圧、血球生成量の減少、腎障害、骨塩量の減少(長期使用時)、不妊、月経周期の変化、発疹、下痢、頭痛、脱毛など、多くの副作用が出る可能性があります。またライコウトウは、先天異常を引き起こす可能性があるため、妊娠中は使用しないでください。
②魚油:(有効性エビデンス:レベル3「確実ではないが有効性が科学的に示唆されている」
![EPA - あぽてけ診療所](https://wellness-science.tokyo/wp-content/uploads/2023/04/EPA-1024x683.jpg)
サバ、ニシン、サケ、マグロ、タラのような魚から摂れる魚油にはn-3系不飽和脂肪酸(オメガ脂肪酸)が豊富に含まれますが、魚油に含まれる成分の中で最も重要なのがEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)です。
魚油を単独、または抗炎症薬(ナプロキセン)と一緒に服用することで、関節リウマチの症状緩和につながることが示されています。
また、魚油の摂取により抗炎症薬の服用量を減らせたり、魚油を静脈内投与すると関節の腫れや痛みが緩和することが示唆されています。
関節リウマチに対する魚油の効果を検証した約20の臨床試験(二重盲検プラセボ対照試験)を見ると、多くの試験において魚油の摂取量増加に伴い、関節リウマチにおける早朝の関節のこわばりや握力、関節の腫れ、関節の痛みなど、が改善することが示されました。
特に関節の痛みが改善した患者さんの割合が多く、魚油を摂取した方の77%に痛みの改善が見られました。
注目すべき点としては、一部の試験において魚油の摂取により非ステロイド系抗炎症薬の使用量が減少した点が挙げられます。
すなわち、魚油を補完的に摂取することで、
普段使用する薬剤の一部を減量できる可能性が示されました。
③ビタミンE(α-トコフェロール):(有効性エビデンス:レベル3「確実ではないが有効性が科学的に示唆されている」
![ビタミンE - あぽてけ診療所](https://wellness-science.tokyo/wp-content/uploads/2023/08/ビタミンE-1024x684.jpg)
脂溶性のビタミンであるビタミンEは、肉や卵、穀物、ブロッコリー等の野菜に含まれ、サプリメントとしても服用できます。
関節リウマチの患者さんが苦しむ疼痛(痛み)の緩和には、薬剤による治療のみよりもビタミンEを併用するほうが効果が高いことが示されています。ただし、ビタミンEを併用しても腫れが改善することはありません。
ビタミンEは摂りすぎると健康にマイナスであることが示されています。
例えば、心疾患や糖尿病がある患者さんは1日400IU以上のビタミンEを摂ると脳出血および心不全のリスクが高まり、死亡リスクが上がることが示されています。
このほかにビタミンEをサプリ等で大量に摂取することに注意すべきケースを以下に示します。
・頭頚部がん:再発リスクを高めるデータがあります
・非アルコール性脂肪肝:2年以上継続してビタミンEを摂るとインスリン抵抗性が悪化するデータがあります。
・心臓発作の病歴:ビタミンEにより死亡リスクが高まる恐れがあります。
・骨粗しょう症:骨強度改善のために運動とビタミンC、高用量のビタミンEを併用すると、運動による骨強度改善の効果が下がる恐れがあります。
・前立腺がん:ビタミンEの摂取により前立腺がん発症リスクが上がる可能性があります。
・脳卒中:高用量のビタミンEにより死亡リスクが高まる恐れがあります。
・妊娠中:推奨量内であれば恐らく安全です。
④ボラージ:(有効性エビデンス:レベル3「確実ではないが有効性が科学的に示唆されている」
![ルリジサ - あぽてけ診療所](https://wellness-science.tokyo/wp-content/uploads/2023/09/ルリジサ-1024x767.webp)
「ボラージ」はルリジサという植物の種子から抽出したオイルです。
ボラージを通常用いる抗炎症薬と併用して6週間摂取すると、関節リウマチの症状を改善する可能性があることが示されています。
症状の改善(痛みおよび腫れの改善)は最大24週間にわたり続くことが示されています。
(2)鍼灸
![pixta_49899219_M - あぽてけ診療所 鍼](https://wellness-science.tokyo/wp-content/uploads/2023/04/pixta_49899219_M-1024x682.jpg)
関節リウマチの症状改善における鍼の効果については、
(少し古いですが)1999年に臨床試験が実施されていました。
実際に鍼による治療を行う患者群と、偽処置群(「プラセボ」と呼ばれる:鍼による皮膚穿刺を行わない患者群)とを、①関節リウマチの炎症度、②痛みの改善度合い、③患者さんの生活の質、④全身28か所の関節における腫れと痛み、の4つの指標で比較しました。
その結果、上記4ついずれの評価項目においても、鍼治療による明確な改善効果は認められませんでした。
本試験の結論として、鍼治療は関節リウマチの補完代替療法としては使用できないとしています。
また、2008年に鍼治療の関節リウマチにおける効果を検証したレビューが報告されています。
本レビューでは、鍼治療と偽鍼治療を比較した8件の臨床試験(ランダム化比較試験:RCT)の結果を総括していますが、いずれの試験においても鍼治療による症状の改善が見られませんでした。
鍼治療による効果を薬剤(ジクロフェナクおよびメトトレキサート)による治療効果と比較した臨床試験も実施されましたが、鍼治療が薬剤治療に対して優れた治療効果を示した試験はありませんでした。
これまでの研究結果を総括すると、鍼治療は関節リウマチの症状改善に結びつかないとの認識です。
ただし、いずれの試験においても鍼治療による副作用は認められておらず、少なくとも関節リウマチの患者さんに鍼治療を行うことは安全であると言えそうです。
(3)ヨガ
![ヨーガ家族 - あぽてけ診療所](https://wellness-science.tokyo/wp-content/uploads/2023/04/ヨーガ家族-1-1024x536.jpg)
ヨガは関節リウマチを含む筋骨格系疾患の痛み、および機能改善に役立つことが示されています。また、患者さんにとって、安全性が高い治療法であることも示されています。
2015年に行われた臨床試験で、ヨガのポーズ・呼吸法・瞑想を関節リウマチの患者さんに施すと、ヨガを行わない患者さんと比較して、身体の痛みや精神面において有意な改善が見られました。ヨガを行ったことによる関節症状の悪化や副作用は見られませんでした。
さらに初期の関節リウマチ患者さんを対象にした大規模臨床試験において、標準的な薬剤治療とヨガを組み合わせると、薬剤のみを服用した場合に比べて12週間後の圧痛関節数(DAS28)が有意に改善し、炎症マーカーであるIL-1αとコルチゾールも低下しました。
ヨガには様々な種類があり、関節リウマチ患者にとって勧められるものを利用することが大切です。
関節や骨に大きな負担をかけないヨガとしては、例えばアヌサラヨガ、インテグラルヨガ、シヴァナンダヨガ等が良いようです。
(4)マッサージ
![指圧 - あぽてけ診療所](https://wellness-science.tokyo/wp-content/uploads/2023/08/指圧-1024x683.jpg)
マッサージはストレスや不安を緩和し、副交感神経を優位にすることで、疼痛(=しつこい痛み)を改善する効果があります。
また、マッサージによる機械的圧力が筋肉内の受容体を刺激して、関節全体の緊張を低下させるといわれています。
2013年に実施された臨床試験では、42人の関節リウマチ患者さんを対象に関節リウマチの症状に対するマッサージの効果が検証されました。
マッサージを受けた群の患者さんでは、関節の痛みが改善し、関節の可動域が拡大、握力も上昇しました。
2017年に発表されたレビューでは、関節リウマチにおけるマッサージの効果について検証した7つの臨床試験を総括し、結論としてマッサージの効果を支持するものでした。
関節リウマチの患者さんにマッサージを施術する際に注意する点としては、適度な圧で行う必要がある、ということです。
強い圧で深部の組織をマッサージすると、逆に痛みが増悪する可能性があります。
*カイロプラクティックは関節リウマチに禁忌:関節リウマチにおいてカイロプラクティックの効果を評価した臨床試験(ランダム化比較試験)は実施されておらず、さらに世界保健機関(WHO)は、解剖学的に見て関節リウマチ患者へのカイロプラクティック施術が禁忌としています。特に頚椎の施術は関節軸が不安定になる可能性、横靭帯断裂の可能性があるとしています。
(5)マインドフルネス
![マインドフルネス2 - あぽてけ診療所](https://wellness-science.tokyo/wp-content/uploads/2023/10/マインドフルネス2-1024x682.jpg)
2018年に報告されたレビューで、関節リウマチに対するマインドフルネスの効果が検討されています。
5つの臨床試験から得た結果を総括し、マインドフルネスは関節リウマチ患者さんの精神的健康を改善する可能性がある、と結論付けています。
マインドフルネスを取り入れることで、痛みなど自覚症状の改善と病気への対処能力の向上が証明されました。
最近では、スマートフォンアプリを使ったマインドフルネス瞑想の効果に関するエビデンスも出てきています。
補完代替医療におけるマインドフルネスの優れた点としては、副作用が無いことと、経済的な負担があまり大きくない点が挙げられます。
2.関節リウマチの概要
![関節リウマチの症状-1 - あぽてけ診療所](https://wellness-science.tokyo/wp-content/uploads/2023/09/関節リウマチの症状-1-1024x871.png)
関節リウマチは関節内に存在する滑膜という組織が異常増殖することによって関節内に慢性の炎症を生じる疾患です。遺伝的要因や細菌・ウイルスの感染などが考えられていますが、原因はまだよくわかっていません。
初期は両方の手や足の指の関節が対称的に腫れて、とくに朝、こわばるようになります。
また、人によっては膝関節や股関節など大きな関節にも病変が進み、水が溜まり、動きにくくなり、痛みのために日常生活に困難をおぼえるようになります。
どの年代でもおこりますが、特に30~40歳代の女性に多く発症します。軽症の人もいれば重症の人もいて症状も多彩です。早めの診断・治療が必要です。
進行すると関節が破壊され様々な程度の機能障害を引き起こします。関節症状に加えて貧血や微熱、全身倦怠感などの全身症状を合併することもあります。
全身の関節に進行していく病型の患者さんの場合、指や手首の関節が破壊され、指が短くなったり、関節が脱臼して強く変形することがあります。足のゆびにも変形がおこります。
首の一番上の部分で背骨が前にずれてしまい、脊髄が圧迫され、手足が麻痺したり、呼吸がしにくくなる場合があります。
3.現代医学における関節リウマチの治療
関節リウマチでは早期の薬物治療が重要です。
抗リウマチ剤と非ステロイド性消炎剤を基本に治療を行います。
![化学療法 - あぽてけ診療所](https://wellness-science.tokyo/wp-content/uploads/2023/09/錠剤-1024x804.jpg)
① 抗リウマチ剤:抗リウマチ薬とは、関節リウマチで起きる免疫の亢進を改善(抑制)することで、関節リウマチの炎症を抑え、寛解導入を目的とする薬剤の総称です。メトトレキサート・タクロリムス・ゼルヤンツ・オルミエントのような経口剤と、エンブレル・ヒュミラ・アダリムマブ・エタネルセプトのような注射薬があり、それぞれ抗リウマチ作用のメカニズムが異なります。
(=すなわち各薬剤で副作用も異なります)
メトトレキセートは最もよく使用される抗リウマチ剤で、服用により約7割の患者さんの症状が軽減します。
口内炎や肝障害、胃腸障害が副作用として出ることが知られています。また、抗リウマチ薬の多くは免疫機能を抑制するため、風邪・インフルエンザ・コロナウィルスやその他の感染症に注意が必要となります。
② 非ステロイド系消炎剤:上記の抗リウマチ剤を使用しても痛みや腫れが残る場合に使用します。
炎症を抑える効果がありますが、胃潰瘍を起こしやすくしたり、腎臓の働きを低下させる等の副作用があります。
かつては関節リウマチに対する有効な薬がなかったため、関節の変形を抑えることができずに、寝たきりにつながることもありました。しかし現在では、炎症や炎症の原因となる免疫の異常を起こりにくくする薬が次々と登場しています。骨の破壊が進む前から治療を始めることで、変形を防ぎ、寛解(かんかい)(病気が落ち着いて安定している状態)を保つことができます。
関節リウマチを根治することはできませんが、使用できる薬剤の種類が多く効果も高いため、うまく利用することで長期にわたり症状の進行を食い止めることができるようになっています。
自己判断で薬をやめたり、量を減らしたりすると、症状が悪化してしまうことがあります。治療を続け、寛解を保っていくことが大切です。
補助療法として、ステロイド剤やヒアルロン酸製剤の関節内注射が行われることもあります。 手や足の周囲だけで比較的軽く経過する場合が多いのですが、長い間に全身の関節に炎症が進み、最後には関節やときには背骨の手術が必要になる場合もあります。
また、指の仲筋腱が断裂して手術が必要になることもあります。
![IMG_1102 - あぽてけ診療所](https://wellness-science.tokyo/wp-content/uploads/2023/04/IMG_1102-1024x768.jpg)
2023.9. 弘前城の草刈り photo by 金ひげ先生