2024/9/20
依存症という病 ゲーム依存 「心が困っている」サイン 京で臨床心理士講演
・親子でルール作り/他に楽しい時間を 否定せず、内面に寄り添う
ゲーム依存などについて考える講演会「デジタル社会と依存症~ゲーム依存に寄り添うなかでみえてくる“自分育て”」が、京都市下京区の京都つくば開成高で開かれた。臨床心理士の竹村洋子さんが、一人で楽しめるスマートフォンの普及で、大人も子どもも人との距離の取り方や生きる実感が持ちにくくなっているとし、「依存の症状は命の声。否定せず、その人を整える手がかりと捉えて」と強調した。
竹村さんは市のスクールカウンセラーや依存症の支援者として長年関わってきた。依存症は誰でもなりうる病で、酒やギャンブル、ゲームなどで生きづらさや孤独感を“応急措置”しているといい、「依存症になることで逆に死ななくて済んでいる」と説明する。
ネット依存は成人で約421万人、中高生で約93万人いるとされ、その9割がゲーム依存という。ゲームでドーパミンが放出され、刺激を求めて繰り返すと、自分の意志でやめられなくなってしまう。
子どものネット依存を防ぐために大切なのは、家庭でのルール作り。使う場所や時間帯、金額などを親子で一緒に決め、見える場所にルールを貼っておくといいという。「話し合うことで互いの気持ちを知れる。親が一方的に押しつけるのはだめ」と注意を促す。
重要なのは、親もルールを守って利用制限することや、キャンプやスポーツなどゲーム以外の楽しむ時間を親子で持つことという。ただ、重症のケースは専門の医療機関の受診を勧める。1日のスマホ利用記録を取り、認知行動療法などの治療が一般的という。 スマホでも酒でも依存症に陥ると、心と体のバランスを自らの五感で感じ取りにくくなるという。竹村さんは「依存は『心が困っている』というサイン。相手の内面に寄り添い、依存しているもの以外の時間を増やす工夫を重ねると、変化が生まれる」と助言した。講演会には、教育関係者ら30人余りが参加した。
(金ひげ先生コメント)昨日から続いて、「子供のデジタル依存」に関する内容です。
(・・・私がかなり気に病んでいる事情をお察しいただけると幸いです_(._.)_)
「ルールづくり」、うちでもいろいろやりましたが、ことごとく破られ・・・まさに「約束は破るためにあるもの」状態でした。ある時は機器をゴミ箱に捨てるふりをして見せたり、その時はホントに深く反省するのですが、まぁ、3日と続きませんね。はぁ~。「ゲーム以外の楽しむ時間を持つ」という方法は大賛成なのですが、すでに子供がこちらの誘いに乗ってこない・・・。回転ずしに誘うと来ますが、毎回そういうわけにもいかないので。目下我が家でも奮闘中の課題であります。ハイ。
2024/9/19
乳幼児 スマホ使用にリスク 京あんしんこども館 健康教室 近視、依存症、発達に影響も 言葉の力 伸ばす読み聞かせ
子どもとスマートフォンについて考える健康教室が京都市子ども保健医療相談・事故防止センターで開かれた。長村敏生センター長がスマホによる子どもの発達や心身への影響、学習に及ぼすことについて解説し、保護者としての心構えをアドバイスした。
長時間のスマホ使用の悪影響として、まず近視を挙げた。文部科学省の調査で裸眼視力1・0未満の子どもは小中高生ともに増加傾向が続いており、スマホや教育用を含むタブレットの長時間利用による近視の進行が懸念されている。近視は後年の白内障や網膜剥離などのリスクを高める。近視だけでなく内斜視やドライアイ、睡眠障害などの悪影響も指摘されていることを指摘した。
子どもに「電子おしゃぶり」としてビデオやスマホ、タブレットの映像を見せることについて「スマホ依存症の始まりであり、子育てはかえって大変になってしまう」と警告。動画サイトなどはユーザーの関心を分析して興味をひく内容を選んで提供していることから、依存症のリスクが高いことを説明した。
日本の1~3歳児を対象とした調査を紹介。テレビやDVDの視聴時間が長いと発達指数が低下する傾向がある一方、絵本の読み聞かせや年上のきょうだい、保育園通園などコミュニケーションの程度が高い子どもは視聴時間が短い傾向があり、発達やコミュニケーションへの影響が示唆された。
映像視聴への懸念が広がっている現状を挙げ、アメリカ小児学会によるテレビやビデオ、ゲームなどのスクリーンタイム(視聴時間)に関するガイドラインを示した。
スマホの学習影響について仙台市の調査を紹介した。スマホを所持する中学2、3年生の8割前後がスマホを使いながら「ながら勉強」をしていた。中学生の半数はLINEや動画、ゲーム、音楽など複数のアプリを使用しており、使うアプリの数が多いほど学力が低下する傾向があった。
「人の脳は一度に一つのことしか集中できない」として、「ながら勉強」やLINEからのメッセージに気を取られることの悪影響を指摘。ネットで調べるよりも、辞書で調べる方が脳が活性化しているとの研究を挙げ、IT機器の学習利用にはリスクがあるとした。オンラインコミュニケーションは他者のことを考える「共感力」を育むことにはつながらないとも強調した。
一方で、読み聞かせで親子の脳活動が連動するとの研究を示し、読み聞かせが言葉を扱う能力や聞く能力を伸ばし、親子の愛着関係を強め、読書習慣を育んで脳の発達につながるとした。
最後にスマホの過度の利用について、時間を奪い、集中力を低下させ、睡眠障害が依存症を引き起こし、孤独感・孤立感を高めるなどとして、電子スクリーンにはない人生経験を求めた。
参加者から「スマホで動画を見せると泣きやむ」としてアドバイスを求められると、「現実的にはしょうがないときもあるが、ずっと続けると影響は大きい」として、スマホに頼らない子育てを考えることの大切さを伝えた。
(参考)
アメリカ小児学会によるスクリーンタイムに関するガイドライン:
・1歳半まで スクリーンタイムはゼロ。遠隔家族などとのビデオチャットのみは可
・1歳半~2歳 質の高い内容を選び、必ず保護者が子どもと一緒に視聴
・2~5歳 質の高い内容を選び、1日1時間までとし、子どもの理解を助けるよう保護者も一緒に視聴
*子どもをおとなしくさせるためだけには使用しない
*大人は子どもと遊ぶとき、食事中、寝室では電子メディアを使わない
*IT機器はすぐに使えるようになるので早くから使わせようと思わなくてよい
(金ひげ先生コメント)電車に乗る時、スーパーで買い物する時、子どもがグズるとついついスマホを見せてしまいますよね・・・ぴたっ、と静かになるのでとても便利です。自分も若干後ろめたい気がしつつ利用していましたが、米国小児学会からガイドラインも出ていることを全く知りませんでした。これを見ていたら、たぶん見せなかったでしょう。そんなうちの子供は今やすっかり、「依存気味」です。ホント悩ましい(´;ω;`)ウゥゥ
2024/9/18
カフェイン+甘味=体内時計に乱れ 広島大グループ発表 マウス実験で「昼夜逆転」
ブラックコーヒーよりも砂糖入りコーヒーの方が体内時計が乱れやすい―。広島大の研究グループがそんな可能性を示す研究成果を発表した。マウスを使った実験で、甘みを加えたカフェイン水を与えると生活リズムが乱れ、本来の夜行性から昼行性になった。
同大大学院医系科学研究科の田原優准教授(時間生物学)たちの研究。夕方以降のカフェイン摂取は体内時計の遅れにつながるとされているが、今回は甘みの有無による影響の違いに着目した。砂糖または人工甘味料を混ぜたカフェイン水を飲んだマウスは、活動の開始と終了の時間が徐々に遅れて生活リズムが乱れ、昼夜逆転した。1日の周期が26~30時間に延びた個体もあった。一方、甘味水だけや、甘みを含まないカフェイン水では、同様の現象は見られなかった。
田原准教授は「砂糖や人工甘味料とカフェインを同時に摂取したマウスは、神経伝達物質ドーパミンの働きが活性化し、昼夜逆転したのではないか」と推測する。
今後は人でも検証し、カフェインの適切な摂取タイミングを調べる計画。「コーヒーやエナジードリンクなどが生活リズムに影響を与えるメカニズムの解明につなげたい」としている。 成果は、英ネイチャー系の学術誌「npj Science of Food」に掲載された。
(金ひげ先生コメント)これは興味深い研究です。世の中に販売されている「いわゆるドリンク剤」の多くには、カフェインと糖分がかなり含まれていますので、これらが明らかに概日リズムに影響を与えるとなると、ドリンク剤を販売するメーカーは大幅な製品改良を強いられるかもしれません。私はドリンク剤や甘いカフェイン飲料を飲まないですが、身の回りには愛飲している輩(やから)が結構多いです。研究現場という特色もあるのでしょうが、彼らの昼夜が逆転気味なのは果たして飲料のせいなのか・・・当の本人たちは「夜は邪魔が入らないので研究がはかどる」と言っていますが。
2024/9/15-1
COVID-19後の日本人の食習慣の特徴 2.7万人の全国調査に基づくクラスター分析
日本国民の食習慣の特徴に関する最新の調査結果が報告された。慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュートの野村周平氏らが、一般社団法人Data for Social Transformation(DST)の協力のもとで行った全国規模でのweb調査の結果であり、「Nutrients」に論文が掲載された。クラスター分析により、日本人の食事パターン、および、栄養や健康に関する態度は四つに分類され、クラスター間でウェルビーイングや社会的孤立の程度に差が認められるという。また、冷凍食品の位置付けが過去の報告から変化するなど、COVID-19パンデミック後の現在の日本人の食生活の実態が示されている。
・日本人の食習慣の実態とその関連因子を探る最新の研究
食生活は、食欲を満たすことはもちろん文化の一部であるとともに、健康の維持に欠かせない。野村氏が日本の推計をリードする世界の疾病負荷研究(Global Burden of Disease Study)の報告によると、障害調整生存年(disability-adjusted life years;DALYs)で評価される2019年時点の世界の健康損失の7.4%は非健康的な食生活によるもので、日本でも6.6%を占めるとされている。また新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより人々のライフスタイルが大きく変わり、慢性疾患の蔓延と感染症拡大の相互作用が「シンデミック」と表現されるなど、食習慣等への新たな対策の必要性が指摘されるようになった。
加えて、個人の食習慣はウェルビーイングや社会とのつながりとも関係のあることが知られるようになってきている。ただしそれらの点についての研究の多くは海外で行われたものであり、日本の食習慣や文化についての検討はあまり行われておらず、とくにCOVID-19パンデミック後にはまだほとんど研究報告がない。
以上を背景として野村氏らは、日本人の食習慣に関する最新の調査を行い、ウェルビーイングや社会的つながりなどとの関連についても検討を行った。
・3万人近くの成人の食事パターンと栄養や健康に関する態度を調査
調査会社のパネルに登録している約500万人から、年齢・性別・地域が人口構成に一致するように配慮したうえで、20歳以上の成人2万7,905人を対象にアンケート調査を行った。アンケート実施期間は2024年2月1日からの14日間で、年齢・性別・地域ごとの割り当ての上限に達した時点で回答を締め切った。アンケートは主に、ふだんの食事パターン、および、栄養や健康に関する態度という2点に焦点を当て、それら以外に、BMI、職業、既往症、主観的健康観、教育歴、婚姻状況、収入、幸福度や社会とのつながり、ソーシャルメディア(SNS)の使用状況などに関する質問項目が設定されていた。
ふだんの食事パターンは、食事多様性スコア(Dietary Variety Score;DVS)により評価した。DVSは、魚介類、大豆・大豆製品、緑黄色野菜、根野菜、果物、肉類、卵、牛乳、油脂類、海藻という10種類の食品群について、過去7日間での摂取頻度を問い、「ほぼ毎日」を1点、その他は0点とスコア化する。
栄養や健康に関する態度は、塩分の摂取減、砂糖の摂取減、人工添加物の摂取減、飽和脂肪の摂取減、カロリー制限、ビタミンの摂取増、食物繊維の摂取増、不飽和脂肪の摂取増という8項目について、「全く重要でない」から「極めて重要」の7段階のリッカートスコアで回答を得た。
・日本人を四つのクラスターに分類して比較
極端なBMI(中央値から四分位範囲の1.5倍以上乖離)を報告した751人を除外し、2万7,154人(97.3%)を解析対象とした。平均年齢は53.6±16.61歳、男性51.55%、BMI21.89±3.17で、60.3%が既婚者で45.6%が高等教育を受けており、56.4%が何らかの既往症を有していた。
研究では、食習慣の特徴をいくつかのパターンに分類するクラスター分析が行われた。この分析には、UMAP(Uniform Manifold Approximation and Projection)やOPTICS(Ordering Points To Identify the Clustering Structure)という、データ解析手法を用いた。その結果、ふだんの食事パターン、および、栄養や健康に関する態度は、それぞれ四つのクラスターに分類された。
・ふだんの食事パターンによる四つのクラスター
ふだんの食事パターンのクラスター1は、肉や油脂類を毎日摂取していることで特徴付けられる人たちで、全体の3.1%を占めていた。クラスター2は牛乳を毎日摂取していることが特徴の人たちで全体の6.0%、クラスター3はバランスの良い、多様性の高い食事を維持している人たちで67.2%、クラスター4は特定の食事パターンをもたない、多様性の低い食事をとる人たちで23.7%を占めていた。
クラスター3はクラスター4に比べて年齢が高くて女性が多く、教育歴が長くて既婚者が多く、喫煙率は低い傾向にあった。またクラスター3の人は、ウェルビーイングが高く、社会的孤立が少なく、食事に関しては自炊の頻度とともに冷凍食品の利用頻度も高かった。加えてCOVID-19パンデミックをきっかけに、缶詰や冷凍食品などの保存食品の備蓄を増やしたこと、レシピ提案アプリの使用率が高いことも明らかになった。
・栄養や健康に関する態度による四つのクラスター
栄養や健康に関する態度のクラスターAは、8項目の質問に対して最高または最低のリッカートスコアを選択するという、極端な回答を示す傾向のある人たちで、全体の5.5%を占めていた。クラスターBは多くの栄養素を「重要でない」と認識している人たちで全体の9.5%、クラスターCは多くの栄養素が「重要である」と認識している人たちで64.1%、クラスターDは、栄養素の重要性に関して中間的な立場の人たちで21.0%を占めていた。
クラスターCはクラスターDに比べると、上述のクラスター3とクラスター4とを比較した場合と同じような傾向が認められた。実際、クラスター3の70.3%はクラスターCに属し、クラスターCの73.4%がクラスター3に属していた。
・個人の特徴を考慮し、栄養介入を含む多面的アプローチが重要
著者らは研究の限界点として、横断研究であり健康アウトカムとの関連を評価していないこと、自己申告に基づく解析であることなどを挙げたうえで、「我々の研究は、健康的な食事に対する社会経済的および社会文化的な障壁に対処するために、栄養教育とともに多面的な介入が重要であることを強調するものと言える。生活習慣病のリスク因子の抑制には、個人の傾向に配慮しカスタマイズされた公衆衛生戦略に基づいて、健康的な食習慣を後押ししていく必要があるだろう」と総括している。
・冷凍食品は健康的な食生活の維持に不可欠な時代
ところで、本研究では前述のように、栄養素を重視しバランスの良い食生活を送っているクラスターで、冷凍食品の利用に関する行動が多く認められた。この点について論文の考察では、「この発見は、冷凍食品が生鮮食品に比べて劣るという考え方に一石を投じるものにと言える。冷凍食品の種類や栄養価、味が向上したこと、そして高齢化が進行し、現役世代では忙しい生活を送っていること、さらにCOVID-19パンデミックを経たことで、現在の日本人にとって冷凍食品は、健康的な食習慣を続けるための重要な要素となり得るかもしれない」と述べられている。
文献情報
原題のタイトルは、「Characterizing Healthy Dietary Practices in Japan: Insights from a 2024 Nationwide Survey and Cluster Analysis」。〔Nutrients. 2024 May 8;16(10):1412〕
原文はこちら(MDPI)
2024/9/15-2
毛髪中のストレスホルモンが身体的負荷量を反映 新潟医療福祉大学と群馬大学が発見
新潟医療福祉大学健康科学部健康スポーツ学科の佐藤茉由さん(2023年度卒業)、佐々木美悠さん(2023年度卒業)、同大学の越智元太講師および群馬大学共同教育学部の島孟留准教授らの研究グループは、毛髪中のストレスホルモンが長期トレーニングにより受けた身体的負荷量変化と関連することを明らかにした。アスリートのオーバートレーニング予防には、身体的負荷量の評価が重要だが、従来、こうした評価は選手やコーチの主観や経験則によって行われてきた。
本研究では、アスリートの身体的負荷量の客観的な評価法となりうる、毛髪コルチゾールとトレーニング負荷量との関連性を見出した。ストレスを感じた際に分泌されるストレスホルモンとして知られるコルチゾールは、毛髪中に蓄積される。そこで、女子大学サッカー選手28名を対象として、チームが所属するリーグ戦前半が終わりオフ期に入った8月と、全日本大学選手権大会直前の12月にそれぞれ採取した毛髪(根本から1cm程度)中のコルチゾール濃度を分析した。その結果、選手らの自己申告による1か月間に受けたトレーニング負荷量と、毛髪中コルチゾール濃度との間に、有意な正の相関を認めたという。
この結果から、毛髪中コルチゾールはトレーニングにより受けた身体的負荷量変化を反映する可能性があるとしており、毛髪中コルチゾールを測定することで、これまで主観的評価しか行われなかったアスリートのトレーニングによる身体的負荷量を、非侵襲的かつ生理的に評価できる可能性が明らかとなった。
トレーニング負荷に関する従来の主観的評価に加えて、本研究が見出した毛髪中コルチゾールによる客観的評価を加えることで、アスリートのパフォーマンス向上に向けたトレーニング計画の立案や、安心安全なスポーツ活動の実現に寄与することが期待される。
(金ひげ先生コメント)このニュース、アスリートにとっては必ずしも「朗報」ではないですね・・。
「手を抜く」⇒「負荷量が低下」⇒「毛髪中のコルチゾール量低下」で、練習怠けるとコーチにばれてしまいます。おそらくはヒトによって、身体的負荷量とそれにより分泌されるストレスホルモン量に差があると思いますので、一律「怠けている」とは言えないとは思いますが。
仕事を怠けているとある種のホルモン量が減る・・・なんていう報告が出てこないことを祈念いたします。合掌。
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