2024/10/18
混合タンパク質摂取によりゴルフスイングパフォーマンス向上
栄養によるゴルフスイングのパフォーマンスへの影響を検討した先行研究はこれまでなかったが、本研究(二重盲検無作為化プラセボ対照試験)では、被験者(ハンディキャップが 20 未満、20~64 歳、BMI が 18.5 以下と 30 を超えるものは除外)60 名を混合タンパク質群(n=30)とプラセボ群(n=30)に分け、1 日 1回・8 週間摂取させた(混合タンパク質:カゼインカルシウム 11.1g、乳清タンパク質 5.7g、分離エンドウ豆タンパク質 5.7g)。
被験者は通常の食事やライフスタイルを維持することを求められた。
介入前後で身体計測、筋力、2 分間腕立て伏せ、バランス、ゴルフスイングのパフォーマンスが評価された。その結果、混合タンパク質群とプラセボ群の間にドライバーの飛距離とボールスピードに有意差が認められ、混合タンパク質は事前測定と比べてドライバーの飛距離を 5.17±12.8 m、ボールスピードを 1.36±2.87 m/s 有意に増加させた。更に、握力
(+2.12±3.47 kg)、2 分間腕立て伏せ(+4.89±8.14 回)、バランススコア(-0.37±0.69 分、p=0.009)において有意な改善が観察された。身体計測値に有意差は認められなかった。
*「Journal of the International Society of Sports Nutrition」掲載論文(オープンアクセス):「Effect of mixed protein supplementation on golf performance and muscle function: a
randomized, double-blind, placebo-controlled study」
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/15502783.2024.2393368#d1e551
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2024/10/17
亜鉛と鉄の摂取量が少ないと耳鳴りの発症リスクが上昇?(観察研究)
豪マッコーリー大学(Macquarie University)等による研究。様々なビタミンやミネラルを
含む健康的な食事は、耳鳴りを予防する可能性がある。
この研究(50 歳以上の 2,947 名を対象とした縦断的コホート研究)では、10 年に亘る食事からのビタミン・ミネラルの摂取量と耳鳴りの有病率および発症率との関連が評価された。935 例(32%)の耳鳴りが同定され、有病率解析に組み入れられた。
残りの 2,012 人の参加者を追跡し、耳鳴りの 10 年間の発症率が推定された。有効性を検証した半定量的食物摂取頻度調査票を用いて、食事性ビタミン・ミネラルの摂取量を推定した結果、耳鳴りの有病率との有意な関連は認められなかったが、鉄と亜鉛は耳鳴りの発症リスクと有意に関連していた。亜鉛の摂取量が少ないと 10 年間で耳鳴りを発症するリスクが 44%増加し、鉄の摂取量が少ないとリスクが 35%増加した。論文著者は、比較可能な質の高いデータが不足していることをこの研究の限界とし、しっかりとした研究デザインのものを含めて研究を進めるべきとしている。
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2024/10/15
九大が毛髪からの細菌分離法を確立し分離菌を獲得、毛髪化粧品開発に期待へ
九州大学は毛髪からの細菌分離法確立により24培養条件から27属63種の分離菌を獲得し、一部の毛髪細菌が貧栄養および脂質添加条件により生育促進を示したこと、さらに、汗含有のグルコースや皮脂含有のグリセロールおよび広範なヘアケア剤含有のマンニトールの資化性を示すことを詳細に解明したと発表した。
同成果は、九大大学院 農学研究院の田代幸寛准教授、同・大城麦人助教、同・酒井謙二名誉教授、同・山田あずさ学術研究員、同・西悠里大学院生(研究当時)、同・野口芽生大学院生、東京農業大学応用生物科学部の渡邉康太助教らの共同研究チームによるもの。詳細は、日本生物工学学会が刊行するバイオサイエンス/テクノロジーの全般を扱う学術誌「Journal of Bioscience and Bioengineering」に掲載された。
人体のさまざまな部位には多様な微生物叢が形成されており、そうした中で近年発見されたのが毛髪の常在菌(以下、毛髪細菌)。しかし、まだ情報が乏しくその栄養源も不明だという。これまでの研究で、毛根内部で表皮細胞との接触により、ヒト細胞の抗老化や延命に関わる遺伝子発現制御に影響を及ぼすことなども報告されていたが、標準株が利用されていることが課題だったとする。毛髪環境に適合した細菌がヒトに及ぼす影響を適切に評価するには、毛髪から分離した細菌を使用しての詳細な研究が必要という。ところが、毛髪からの細菌分離はこれまで報告が無く、適当な分離手法および分離条件も十分ではなかったとする。そこで研究チームは今回、毛髪細菌を分離するにあたり、8種の培地を用いて培地濃度や酸素要求性、ゲル化剤、脂質添加などの培養条件を検討し、24条件で培養を行うことにしたという。
分離手法は、被験者18名より採取された毛髪を各固体培地上に静置しての培養後、毛髪周辺のコロニーを採取し、2回の純化(目的の細菌1種のみを獲得を目的として、採取と培養を繰り返す作業のこと)を経て、DNA抽出後に細菌種の同定が行われた。その結果、27属63種の細菌を分離することに成功したとする。
獲得された各細菌種の好む環境に関しては、希釈条件と非希釈条件における獲得毛髪分離菌数が各16種だったことから、富栄養と貧栄養環境を好む細菌種が同程度共存することが示唆されており、皮膚上では富栄養を好む細菌が多いことから、毛髪環境の特異性を示唆する結果となったとした。また脂質添加および無添加条件では、両条件共通して3種、添加条件のみから10種、無添加条件のみから4種の細菌が獲得された。特に、全24条件のうち脂質添加時のみで3種が分離されたことから、毛髪細菌の生育嗜好性に脂質が関与することが示唆された。
それらに加え、全分離菌の獲得傾向が、細菌種により異なることも発見されたという。そして、頻繁に分離可能な細菌種を「易分離微生物」、少ない培養条件でのみ分離された細菌種を「難分離微生物」と定義し、細菌種の分離可能性を初めて定量的に示せたとした。また、研究チームの先行研究で実施された菌叢解析の結果と照合すると、毛髪細菌の占有率と今回の研究による獲得細菌の相関が無いことが示され、易分離微生物と優占細菌は異なることが示唆されたとした。
また、獲得された毛髪分離菌から優占細菌種5種(C acnes subsp.defendens、C. acnes subsp.acnes、Staphylococcus epidermidis、S.caprae、Micrococcus luteus)を選択し、50種類の炭素資化性の評価が行われた。その結果、汗に含まれるグルコース(ブドウ糖)や皮脂の分解物である「グリセロール」だけでなく、ヘアケア化粧品に保湿剤として広く含有されている「マンニトール」の資化性が示されたという。特に、標準株と異なる資化性が示された結果として、M.luteus毛髪分離株はグルコースの、C.acnes subsp.defendens、C.acnes subsp.acnes毛髪分離株はマンニトールの資化性を有することから、毛髪環境で棲息に有利な資化性を獲得した可能性が考えられるとした。
今後、獲得した毛髪分離菌を用いて表皮細胞への添加試験を行い、ヒト細胞の遺伝子発現制御に対して標準株と分離株を比較することで、毛髪細菌が人体に及ぼす影響を鮮明に理解できることが期待されるという。今回の研究による毛髪細菌分離手法や毛髪分離菌は、健常な育毛に影響する毛髪細菌種の情報蓄積に活用され、将来特定の細菌種を調整するヘアケア化粧品の開発や、難治療性毛髪疾患の創薬開発につながることを期待しているとした。
(金ひげ先生コメント)これは大変面白い研究ですね!腸内細菌、口腔内細菌、皮膚の常在菌が健康に及ぼす効果については、近年世界中で研究が進んでいますが、毛髪に特有の菌が住んでいて、しかもそのコンディションで毛髪の状況が変化することが証明されれば、ヘアケア製品の流れが大きく変わると思います。九州大学からの研究成果に今後も注目です。
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2024/10/13
酸性で割れて気体を放出、シナモン粒子使ったシャボン玉開発 大阪工業大
塩基性の環境下では安定して存在し、酸性にすると割れて内部の気体を放出する「ガスマーブル」と呼ばれるシャボン玉の開発に大阪工業大学の研究グループが成功した。界面活性剤の代わりに高分子粒子を水膜に吸着させて作製する。この手法を用いて、シナモンの粒子を使ったシャボン玉を開発した。ケーキなどに用いて噛んだときの食感や音も楽しめる。化粧品の香りなどへの応用も期待できるという。
大阪工業大学工学部応用化学科の藤井秀司教授(界面コロイド化学・高分子化学)らの研究グループは様々な気泡についての研究を進めており、これまでに水素イオン濃度を表すpHや温度等の条件によって、気泡の安定性が変化することを見つけていた。
その中で、シャボン玉を微粒子で安定化させる方法を考えてきた。一般的にシャボン玉の安定化には洗剤に含まれる界面活性剤分子が使用されるが、アレルギー反応の原因になり得るという問題がある。そこで藤井教授は、高分子粒子であり、pHによって水へのなじみやすさをコントロールできる特殊な塩基性のポリスチレン粒子でシャボン玉の水膜の表面を覆う方法を思いついた。
まず、シャーレに水を張り、そこに乾燥したポリスチレン粒子をふりかけ、水面を粒子で覆った。次いで、魚を飼う水槽のように空気の気泡を水中に送り込むと、粒子で覆われた水面まで気泡が浮上する。その気泡を粒子で覆われた水面上で転がすと、球状のガスマーブルができあがる。このポリスチレン粒子は、表面の親水性と疎水性のバランスをpHによってコントロールできる性質を持つ。ガスマーブルは、pHが3~4(酸性)であれば瞬時に割れて内部の空気を放出するが、pH9~10(アルカリ性)のときは2時間程度安定した状態を保てる。
完成したガスマーブルの表面構造を電子顕微鏡で観察したところ、ポリスチレン粒子が凝集しているところと、一層でくっついているところがあり、表面には凹凸があることが確認できた。粒子の膜がガスマーブルを覆っていることから、水面や固体の上を転がすことができ、「水陸両用」になっていることも分かった。
藤井教授はこうした仕組みを食品の香り付けに応用できると考え、食べることのできるガスマーブルの作製に取り組んだ。シナモン粒子を安定化剤として使うとガスマーブルは水が蒸発しても割れずに球体を維持し、長期保存することにも成功した。液体として水ではなく牛乳や豆乳、コーヒーを用いて作ってみると、いずれも球体の形状を長期間保った。とりわけ、牛乳でできたガスマーブルは頑丈なため、歯で噛むとカリッと音がして、シナモンの香りも食感も楽しめる「おいしいとこ取り」ができる。
藤井教授は「空気は熱を伝えにくいので、断熱材などにも応用できるのではないか。どのような粒子を用いるとガスマーブルが安定化できるのか、今後も検討を続けたい。将来的には温度や光、圧力の変化でガスマーブルが割れるような手法も開発していきたい」とした。食品以外にも、化粧品やヘアケア用品への実用化を考えているという。
両研究は日本学術振興会の科学研究費助成事業の助成を受けて行われた。酸性のシャボン玉の成果はドイツの科学誌「アドバンスド サイエンス」電子版に6月25日に掲載され、大阪工業大学が7月10日に発表した。シナモンのシャボン玉の成果はドイツの科学誌「アドバンスド ファンクショナル マテリアルズ」電子版に8月6日に掲載され、同大が同月21日に発表した。
(金ひげ先生コメント)「シナモンのシャボン玉」が面白かったのでこの記事を取り上げました。シナモンでできるなら、ほかのスパイスも「食べられるガスマーブル」として利用できそうです。「ガスマーブル」で、カレーとか作ったら面白いでしょうか??
![シナモン - あぽてけ診療所](https://wellness-science.tokyo/wp-content/uploads/2023/09/シナモン-1024x584.jpg)
2024/10/12
小林幸子さんが高齢者のお話し相手に!AIで健康維持をサポートする「Talk With おはなしテレビ」
AI映像対話システム「Talk With」の開発・販売を手掛ける株式会社シルバコンパスは、高齢者の脳の活性化をサポートする新サービスとして、歌手の小林幸子さんをモデルに起用した24時間365日会話が可能なコミュニケーションツール「Talk With おはなしテレビ」(以下本サービス)を2024年12月から販売する。
本サービスは、事前に収録した映像に複数のAI技術や映像データの高速制御技術を組み合わせることで、タブレット端末を通じて小林幸子さんとビデオ通話をしているかのような疑似対話体験ができる映像アプリ。
一般的に高齢者の頭・心・体の健康維持には「会話」が必要不可欠と言われているが、内閣府が発表した「令和6年版高齢社会白書」(参照:内閣府 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/zenbun/pdf/1s3s_01.pdf )によると、令和5年度調査で「人と毎日話す」と答えた高齢者は72.5%で、平成30年度の前回調査結果の90.2%から大幅に減少した。特にひとり暮らしの高齢者に限ってみると、「人と毎日話す」としたのは38.9%まで減少し、およそ3割の29.6%が1週間に1回以下しか会話をしなかった。コロナ禍の影響もあり、高齢者が気軽に会話する機会を作ることが難しくなっている。
本サービスは、いつでも話ができる話し相手を作り日常の発話機会を増やすことを目的としており、知名度の高い国民的歌手の小林幸子さんと「クイズ」「歌」「脳トレ」「思い出話」などエンターテインメント性の高いテーマで疑似対話体験をすることで、脳の活性化や心の健康維持をサポートするサービス。ひとり暮らしや施設入居中の高齢者の方々の利用のみでなく、人手不足の病院や介護施設へのサービス導入も計画している。
(金ひげ先生コメント)65歳以上の方で一人暮らしをされている方は全国になんと、630万人以上いらっしゃる、という政府の調査結果が出ています。そのうち3割:200万人は一週間に一回も他人と会話をしていない・・・きわめて重大な問題だと思いました。 AIの小林幸子さんでも何もないよりは良いのでしょうか??・・・なんだか考えさせられました。
![元気なシニア - あぽてけ診療所](https://wellness-science.tokyo/wp-content/uploads/2024/07/元気なシニア-2-1024x683.jpg)
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