病気は医薬以外で対処できるのか?

医薬研究者が考える
補完代替療法のサイエンス&エビデンス

補完代替医療は何のために存在するか?

投薬や手術、放射線療法等を用いる西洋医学は感染症をはじめとする多くの疾患を治療可能にしてきた点で素晴らしい功績があります。
一方それでもなお、原因が明らかでない慢性疾患やストレス等の精神的な要素が関連する疾患、再発性の疾患など西洋医学の力が及ばない疾患が数多く存在しています。

抗生物質を用いる化学療法の感染症における効果は言うまでもないですが、同時に抗生物質に対する新たな耐性菌やウィルス変異株の出現など、西洋医学では完全に解決できない問題が、未だとてもたくさん残されています。

さらに、たとえば西洋医学でうまく治療できた場合でも、コロナウィルス感染症における味覚異常や疲れやすさなどの後遺症、高血圧治療後の顔のほてり・息切れ・発汗等さまざまな自覚症状が残ってしまう場合が多くあります。
このようないわゆる「不定愁訴(ふていしゅうそ)」と呼ばれる症状を西洋医学で改善するのは困難なことがとても多いです。

西洋医学が多くの病気の診断や治療において、大きな力を発揮していることは事実ですが、上記のように力が及ばない部分があります。

このように西洋医学の力が及ばないところを補完代替医療で補い、患者の生活の質(QOL)を高めることが可能です。

左:コモンセージ。強い殺菌作用のほかにも多くの機能を持つ。
(2023.8 代々木公園)
右:足裏の経穴(ツボ)

近年になって特に補完代替医療が注目されてきた大きな理由の一つに「治療に対する患者の意識の高まり」を挙げることができます。

これまで患者は医師の言うがままに治療を受けているだけでしたが、自身の治療に対する意識が芽生え始め、自分にとって良い治療法を選ぶ権利があることに気づき始めています。これにより患者の意思により補完代替医療を選択する機会が増えてきています。

このブログでは、世の中に存在する補完代替医療について医薬研究者の目から科学的にとらえ、国内外の臨床試験データや論文・特許情報を基にその科学的エビデンスについて考察していきます。
一部補完代替療法として分類されることがある伝統的な信仰や民間伝承等は多くがエビデンスに欠けるため、ここでは扱っていません。

また、インターネット上にある不確かな情報には頼らずに記載を行っています。

特にサプリメントや栄養表示食品に関するエビデンスレベルについては、世界最大のデータベースであり、科学的根拠の指針とされている「Natural Medicines(ナチュラルメディシンズ)」で、常に確認しながら記載しています

「ナチュラルメディシンズ」は米国にて1999年より運用が開始されたデータベースで、1,200種類の健康食品やサプリの素材や成分に関する最新の知見が収載されています。素材名・成分名ごとに有効性や安全性、使用量の目安、体内での働き、医薬品との相互作用などがまとめられており、適宜情報が更新されています。
ナチュラルメディシンズはその信頼性の高さから、本分野におけるゴールデンスタンダートとして認められています。

補完代替療法を科学から考える

補完代替医療(Complementary and Alternative Medicine)とは、現在私たちが受けている西洋医学を代替、または補完する医療のことを言います。

手術や薬剤治療に代表される西洋医学は疾患の各病態を分析し、疾患が起きている臓器に治療の焦点を置きます。また根本治療を目指すため、化学合成や遺伝子組換えを利用した薬剤を投与します。
これに対して、補完代替医療は病態を包括的にとらえて、全人的に診断・治療を目指します。治療法も天然にある草木や、自分の身体が本来持っている治癒の力を利用します。


決して誤解してほしくないのは、西洋医学と補完代替医療はいずれも絶対必要なものであり、むしろそれぞれの長所・短所を補う関係にあるということです。

上の図で示したように、“本当の健康”には①肉体的な健康(痛みなどがない状態)②精神的な健康(ストレスがなく落ち着いた状態)に加えて、③生きる意義(生きがい・周囲の人々に認められている安心感・幸福感がある状態)の3つが満たされる必要があります。

現在の西洋医学は、ほぼ①の達成のみを優先して考えます。
すなわち、「肉体的な健康が得られれば“真の健康”が達成される」という考えに基づいたものですが、これでは決して十分でありません。

つまり、②あるいは③の部分も併せてケアする必要があって、それには補完代替医療を西洋医学に組み合わせる必要がある、と考えます。

このブログでは各疾患ごとに用いられる補完代替療法を科学エビデンスに基づき紹介しますが、各患者さんの体質や合併症、年齢、性別、現在服用している薬剤の種類や、どのような治療を希望するのか、により、利用すべき補完代替療法が大きく異なります。

補完代替療法の基本的な選び方としては、上の図で示した①肉体的な健康、②精神的な健康、③生きる意義の3つを最大化できるものを選ぶべきだと思います。
これには医師に加えて補完代替療法に詳しい人が、患者さん本人とご家族の話を良く聞き、治療を計画していく必要があると考えます。

繰り返しになりますが、インターネットや知り合いの方から得た情報のみで判断するのはとてもリスクが高いです。

私はこのブログを介して少しでもその辺りの情報を発信し、
健康を取り戻すために努力されている方々と共有出来ることを願っています。

ワイルドストロベリー(野イチゴ):普通のイチゴよりもミネラルやビタミン、鉄分を多く含む。美肌や貧血に良いといわれている(2023.5.代々木公園、photo by 金ひげ先生)

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